インタビューの終わりに、日本の伝統的な独楽が日本文化にとって、そして廣井先生自身の人生においても、どれほど重要かについて述べている。世界に江戸独楽を知ってもらいたいという廣井先生の思いも語っている。
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ポーラ:であの先生があの作られたご作品をコレクションに含まって美術館に入ることについて、あのどう思っていらっしゃいますか。
廣井:あぁ、嬉しいですね。非常に嬉しいです。
ポーラ:あの、美術館で展示するのはなぜ大切だと思いますか。
廣井:あぁやっぱり、ああいうところに展示してもらうと多くの人に見てもらえるしね。であのう、こういうところでは、見てもらうっつったって限られてるし。であの、博物館とか美術館に行くような人は、それなりに興味持ってくれてる人たちだと思うので、そういうところで展示してもらうのは、非常にありがたいし、ましてアメリカにそういうところで飾ってもらうは、ものすごく嬉しいです。であの、仙台でもね、あの仙台の博物館にも永久保存されてはいるんですけど、展示はされていないんですよ。
で今言ったその、高城にある歴史民俗博物館、県立の博物館にも、あのう、コレクションしてた篠田さんって方のコレクションが、あのう寄付されてるんですけど、やはり展示はされてないですよね、永久保存ということで。でみんな仕舞われていて。何年かに一度、展示されれば、いいんですけど、いつやるかそいつは博物館次第で、分からないんですよ。んで高城の時も見に、三回行ったんですけど、最初は、最初行った時は、日にち間違えて行って、行ったら休みで。で二度目に行ったら、時間切れで、だめで。三度目に行ったら、もう終わりましたって。へへ。で、あの作者なんですけどって言ったら、作者でもだめです、もう仕舞いましたって。で三回行ったんだけど三回ともみ、見られなかったんですけど。その篠田さんっていう方大事に保存しててくれて、新品同様の品物だったので、是非見たかったんですけどね。で三度行って、三度とも、そういうわけで、とうとう見られてないんですけど、で未だに見られないで残念なんですけどね。で仙台市はやっぱりその通りで、永久保存ということで。ううん、見に行ったって見られないもんね。だからそれがアメリカで、展示されるだか、やっぱり永久保存されるのかな。時々は見せてもらえれば、嬉しいなと思うんですけどね。
ポーラ:であの、このコレクションの、あの、ま、このコレクションに最高のご作品はどれと思っていらっしゃいますか。何かあのう、一番最高なものは何だ、何が、頭に浮かぶのはありますか。
廣井:あぁ…最高っていうか。ま、これ、ちょっと独楽とも違うんですが、お茶道具の、玩具があるんですよ。ううんとね、それ今、前田君が作るんだって今、見本で、あれ?前田君いねえか。そこに多分あると思うんですけど。あの、今…
ポーラ:いや、あのう、今は、あの、大丈夫ですが。
廣井:大丈夫ですか。あとで持ってきて見せますけど。ううんとね、あと、あぁ、その辺にあるかな色々な。ちょっと待ってね。
ポーラ:えぇ、はい。
廣井:その辺にあるかも分かんないな。…ええと前田君がいると分かるんだな。うんんと。こっちかな。色々いっぱいあるんだけど。もっといいのがあるんですけど。ちょっと前田君戻ってこないとダメだ。ちょっとしたもんですけど、こんな。これあのう、春になっと猫が屋根の上で、喧嘩してることがあるんですよ。それを表した独楽なんですけど、これはね。でこれはかえる。これもみんな独楽。これもみんな、ランディス先生も持ってるはずだけどな。
ポーラ:うん、見たことあります。
廣井:うん。あれ?回すの下手だな。ん?回るはず。ん?回んないなこれ。んなことないよな回るはず。これも回る。全部回るはずなんです。こういう風にあのう、みな、回るようにできるんですけど…うん。でさっき言ったようにこれが回らないと、今みたく回らないとちょっとね。これ、これが一番難しいっていうか。これ古いからな。
ポーラ:ではあのう、ランディスさんから聞きましたが、先生はあの、江戸独楽の作品では日本の伝説や文化のテーマをよく取られると伝えました。あのう、このテーマはなぜ先生に大事なことですか。
廣井:なぜって言われても…なぜって言われても、ちょっと困るけど…ううん、昔からそういう言い伝えとか、昔話とか、があるので。でそれがまた面白い、題材なんですよね。だからあのう、それをこう、江戸っ子好みの、しゃれたものに、多少、多少手を加えて、面白おかしく作った、っていうことですね。でみんなが見て、喜ぶように。
例えば、あの桃太郎の鬼退治の話で、桃太郎が勝つことになってるんですけど、逆に、そのう、桃太郎 桃の中から出てきますね。そのおっきな桃を鬼がぶん捕って、で下で鬼が喜んで踊りを踊ってるような、そういう独楽もあるんですけど。これはあの、桃太郎の話分かってる人はね、なんで鬼が喜んでるかが、分かるんですよね。桃太郎の話が分からない人は『なんで?』っていうことになるんですけど。そういう風に、なんっつたらいいのかな、しゃれ飛ばしてるって言ったらいいのかな。そういうのが割に多いですね。だから真面目に、その昔話をそのまんま、再現してるっていうことは、ないんですよね。で一捻りしてある。だから分かる人は分かるけど、分からない人には分からないから、ようく説明してあげると 『あぁ!』って、いうことになるんですけどね。だからあの兎と亀の競争だって、きのう見たあれだって、本当は亀が追い抜くんだけど、時々兎が抜くことがあるんでね、そうすっとみんな大笑いするんですね。へへ。
ポーラ:先生がその、あの江戸独楽を作るときは、あのう、自分がどのような感じですか。
廣井:うん。うんどのようなって「あ、こいつ面白い。ううん、どうしたらもっと面白くできるのかな」 ううんそういうこと考えてやりますね。どうやったら人が喜んでくれるか。で、その昔話を壊さないで、面白おかしく、できないかなとか。そういうことを考えながら、色々作ってるんですけど。
ポーラ:江戸独楽を見るとき、観覧者がどのような鑑賞を持って、あのう、くださればいいと思われますか。
廣井:あぁやっぱり一番、楽しんでもらえるのが一番ですね。もっと面白いって。えぇそれが一番嬉しいですよね。面白いって喜んでもらうことがね。中にはね、い、あの、冗談、冗談が全然通用しない人がいて、それか一番困るのね。しゃれ言っても分からないし、冗談言っても分からないし。ほんでも面白いって言ってくれば、まぁいいかなぁと思うんですけど。でとにかく喜んでもらうっていうことが第一ですね。
ポーラ:で、このコレクションを観て、あの知識を得ることで、どの影響を受けるとご希望しますか。
廣井:ううん、そこまで深く考えことないなあ!あはははは…。そこまで考えたらできななくなっちゃうもん。もう行き当たりばったりっていうと、ちょっと無責任なんだけど。あのう、気づいたとき、さっきの話でないけど、金太郎と桃太郎が喧嘩したら、桃太郎が勝って金太郎が泣きながら山へ帰って行ったら、熊に慰められるってとか。そういう風にあのう、茶化してっていうか、思いついたままに面白く。そうすると分かってくれる人と分かってくれない人がいるんで、へへ。そのへんがちょっとね、困る場合もあるし、「やった!」っていうときもあるしで。考えてみたら無責任な話だね、随分ね、へへ。勝手にぶっ壊しちゃうから。へへへ。
ポーラ:それで何か他に伝えたいことありますか。
廣井:伝えたいこと?
ポーラ:はい。何でもいいんですが。もし、何、何も…
廣井:伝えたいことって…伝えたいことって言えば、これも一つの日本の文化の一つだし。これはそのまま伝えて、残しておきたいですよね。でそのために、まあプロであれ、アマチュアであれ、覚えたい人にはみな教えて、覚えてもらって。で一つでも二つでも、ううん百年後、二百年後にも残ってほしいなあと思って。でなるべく多くの人に、ただコレクションばかりでなくて、作ることも、ううん、覚えてもらえれば、と思って色々何人かに教えて。こんだけの人数を教えれば、おそらく百年後でも二百年後でも、何種類かは残ると思うんですけどね。それを願って今、教えたり、コレクションする人に、作ってあげたりしてはいるんですけどね。どうなるか。百年後は分かんないもんな。